第140回 日商簿記2級

第140回 日商簿記2級 出題予想

商業簿記

第2問
1. 個別論点(有価証券)
2. 個別論点(銀行勘定調整表)
3. 個別論点(株主資本等変動計算書)


第2問は、第1予想として個別論点の有価証券をあげました。社債の購入、売却の際の端数利息の計算、異なる単価の株式を取得したさいの平均原価法、満期保有目的債券の期末評価(償却原価法)、未収利息などの一連の取引から貸借対照表と損益計算書の一部の作成、また決算整理後残高試算表の作成などの問題が予想されます。
また、損益計算書を作成するとき、有価証券売却損と有価証券売却益は相殺して、売却損もしくは売却益のどちらかしか記載されませんので注意してください。

第2予想として、個別論点の銀行勘定調整表をあげました。
銀行勘定調整表は134回、137回に出題されています。
また、今回出題されるとするなら、3級で学習する当座借越を絡めて、貸借対照表の一部が出題される可能性があります。
当座勘定の貸方残高もしくは当座預金出納帳の貸方残高のときは当座借越を意味し、その場合は、貸借対照表には流動負債の区分に「短期借入金」として表示します。
これまで、3級を含めて当座預金は1つだけの銀行が前提でした。しかし、実務的には複数の当座預金口座を持っております。
ですから、検定試験でもA銀行の当座預金残高と銀行残高を合わせるために銀行勘定調整表を作成し、B銀行は当座借越が発生するというような問題も考えられます。
その他には3級で学習する現金過不足などもしっかり確認しておきましょう。

第3予想として、個別論点の株主資本等変動計算書をあげました。
株主資本等変動計算書は138回に初めて2級に出題されました。前々回に出題されているため、しばらく出題の可能性は低いと思いがちですが、最近は2回前に出題された内容が再び出題されるということもありますので要注意です。
株式の発行、合併、剰余金の配当などの仕訳、株主資本等変動計算書の記入はしっかり確認しておきましょう。
また、前々回、株主資本等変動計算書が出題されたときは解答用紙に( )があったため、解けやすい問題でしたが、解答用紙に( )がなくても、株主資本等変動計算書にしっかり記入できるようにしておきましょう。

個別論点の固定資産は前回に出題されたため、今回予想していませんが、銀行勘定調整表や株主資本変動計算書、有価証券などの個別論点が出題された場合、貸借対照表の一部を作成するという問題が出題される可能性があります。その場合、固定資産の減価償却に関する問題も合わせて出題されるということも考えられます。
前回(139回)の第3問で、減価償却に関する問題で直接法から間接法にするという問題が出題されましたので、直接法で行っていた場合の取得原価の求め方を確認しておくとともに、減価償却累計額、取得日から取得原価を推定するという問題も合わせて一度解いておくとよいでしょう。
その他で考えられるのは商品有高帳の総平均法や先入先出法などから期末帳簿棚卸高(帳簿数量と原価)を求め、棚卸減耗損、商品評価損を求め、損益計算書の一部を作成するという問題です。
商品有高帳と期末商品の評価はつながっているということをテキスト等でもう一度確認しておきましょう。
また商品売買に関する取引から手形関係を中心とする仕訳をおこない、貸倒引当金や売上割戻引当金、商品保証引当金などの決算整理仕訳をおこない、決算整理後残高試算表を作成するという問題なども考えられます。

また、社債、特殊商品売買の個別論点、伝票、特殊仕訳帳につきましては28年度の出題範囲から削除されるため、今回の予想からはずしておりますが、112回、126回、132回の第2問は一応念のため一度解いておきましょう。
伝票、特殊仕訳帳の試算表作成につきましても出題の可能性は低いですが、念のため問題集等で一度は解いておきましょう。

第2問では、これまでの問題集に載っていないような問題が出題される可能性がありますが、それらの問題はしょせん基礎を寄せ集めたものです。
テキスト等でしっかり基礎・基本の徹底を図っておれば解けます。
問題演習を繰り返すおこなうことも大切ですが、なぜ、そのような仕訳になるのかしっかり意味を考えながら問題演習をおこなうようにしましょう。




第3問
1. 精算表
2. 財務諸表(損益計算書の作成)
3. 三勘定(損益勘定、繰越利益剰余金勘定)


第1予想として精算表をあげました。
精算表は135回から出題されていないため、出題の可能性が高まっています。
減価償却、貸倒れ、期末商品の評価、満期保有目的債券もしくは社債の償却原価法や未収利息、未払利息の経過勘定など決算整理仕訳はしっかり確認しておきましょう。
そのとき、期末商品の評価で低価法の意味をしっかり確認するとともに、「仕入れの行」だけでなく、「売上原価の行」についても確認しておく必要があります。3級の試験で、この「売上原価の行で売上原価を計算する」という問題が立て続けに出題されましたので、2級 受験者も「売上原価の行で売上原価を計算する」をしっかり確認しておく必要があります。
その他、繰り延べで「毎年、支払っている(受け取っている)」という再振替仕訳をきちんと理解しているかを確認する問題が、最近2級でも出題されております。3級での頻出論点ですが、2級でも出題されておりますので、2級受験者も3級のテキスト、問題集等でしっかり確認しておきましょう。


第2予想として、財務諸表の作成(損益計算書の作成)をあげました。
137回に損益計算書の作成が、138回、139回に貸借対照表の作成が出題されており、財務諸表を作成させるという問題の出題の頻度が上がっています。
また、その内容もこれまでの財務諸表の作成する問題と異なる部分もあるため、試験までに137回、138回、139回は一度確認しておきましょう。
そのなかで、減価償却の月割での見積計上、前払から月割での期間配分、期末商品の評価と棚卸減耗損と商品評価損の計算、見越し・繰り延べなど、136回より以前の内容と異なる部分が多々ありますので、試験までにそれらの事項についてはしっかり確認しておきましょう。


第3予想として、三勘定(損益勘定・繰越利益剰余金勘定)をあげました。
第116回より、会社法の適用によって、未処分利益勘定・繰越利益勘定がなくなり、繰越利益剰余金勘定になりましたが、出題は108回からされておりません。
前回、出題されてから長い間出題されておりませんし、また28年度からも引き続き2級の出題範囲になるため、少し要注意です。
ですから、必ず試験まで108回類題を解いておきましょう。
また、損益勘定・繰越利益剰余金勘定の作成の場合、株主総会のさいの剰余金の配当の仕訳をもう一度確認しておいてください。
損益勘定・繰越利益剰余金勘定作成の問題を解くとき、法人税等の税率が40%の場合、そして中間納付がある問題の場合も想定して問題を解くようにしておきましょう。
また99回、108回に出題されたとき、銀行残高、不一致の原因から一致する前の当座預金残高を推定するという問題が出題されておりますので、そういった推定問題も合わせて確認しておきましょう。



第4問
1. 個別原価計算(勘定記入)
2. 本社工場会計
3. 製造原価報告書



第1予想として個別原価計算の勘定記入をあげました。
個別原価計算は120回、127回、128回、132回、138回と出題されております。
133回に第5問に個別原価計算(仕掛品勘定の作成)が出題されました。
前回、個別原価計算が出題されましたが、仕訳問題でした。
127回、128回は仕掛品勘定の作成でしたが、個別原価計算の仕掛品勘定、製品勘定の作成する問題は128回以来出題されていませんので要注意です。
ですから、試験までに127回、128回は一度解いておきましょう。


第2予想として、本社工場会計をあげました。
本社工場会計は112回、119回、131回、133回に出題されております。
133回に出題されてから少し間が空いていること、最近の工業簿記では仕訳が重要視されていることから十分対策を講じておく必要があります。
そのとき、131回、133回をしっかり解いておくのはもちろんのこと、101回に出題された内部利益を付加する本社工場会計も試験までに一度、解いておきましょう。


第3予想として製造原価報告書をあげました。
製造原価報告書は118回、121回、134回、137回に出題されております。
137回に出題されているため、今回、出題される可能性はそれほど高くないように思われますが、最近ではそれほど間隔をおかずに出題されるときもありますので、十分対策を講じておく必要があります。
特に注意をしたいのは個別原価計算との絡みです。個別原価計算は127回、128回と出題されており、118回では個別原価計算と製造原価報告書をミックスした問題が出題されました。
ですから、118回は試験までに一度解いておくとともに、127回、128回の問題で各自、製造原価報告書を作成してみるとよいでしょう。
勘定記入と財務諸表を関連付けて学習することが大切ですので、今一度テキスト等で確認しておくようにしましょう。
また、材料、賃金、経費の消費額の計算がしっかりできること、直接費と間接費の分類、また、さらに間接費は間接材料費、間接労務費、間接経費の費目別の分類などをできるようおきましょう。
また、製造原価報告書の製造間接費配賦差異の処理方法についても確認しておきましょう。



第5問
1. 標準原価計算
2. 総合原価計算
3. CVP分析・直接原価計算


第1予想として標準原価計算をあげました。
標準原価計算は116回、120回、126回、127回、135回と出題されております。
標準原価計算は135回に出題されて以来、出題されておりませんので、出題の可能性が高まっています。
ですから、十分対策を講じておく必要があります。
従来、標準原価計算は差異分析を中心に出題されることが多かったのですが、126回では仕掛品勘定と損益計算書の作成、127回では原価標準、直接材料費等の総差異、標準消費量を求める問題が出題され、126回、127回は今までと少し違う出題内容の問題でした。
対策としてパターン学習に陥るのではなく、原価標準、勘定記入、差異分析等についてしっかり基礎・基本の徹底を図るようにしましょう。


第2予想として総合原価計算をあげました。
総合原価計算は128回に等級別、129回に組別、130回に単純、131回に工程別、137回に組別、138回に単純総合原価計算が出題されております。
総合原価計算は第5問では一番出題率の高い論点で、131回から出題されておりませんでしたが、137回に久しぶりに出題されて、138回も続けて出題されました。
工業簿記のなかで一番、出題率の高い論点ですので、対策を講じておく必要があります。
そのなかでも等級別総合原価計算は試験までに一度解いておくようにしましょう。
また、仕損・減損の計算方法もしっかり確認しておくとともに、「平均的に投入」、「工程の終点で投入」、「途中で投入(105回に出題)」などのときの計算方法も試験までに一度確認しておきましょう。


第3予想としてCVP分析は108回、114回、117回、124回、132回、134回、136回、139回に出題されております。
前回、出題されておりますが、最近では出題の頻度が上がっており、予想に反して連続して出題される可能性もあります。
したがって、直接原価計算と全部原価計算の損益計算書の作成、直接原価計算と全部原価計算の営業利益が異なる理由、固定費調整などはテキスト等でしっかり確認しておくとともに、CVUP分析では、基本である損益分岐点売上高(販売量)、目標利益を獲得するための売上高(販売量)や安全余裕率などについては確実にできるようにしておかなければなりません。また、単位当たりの販売価格、単位当たりの変動費や固定費の金額が資料より変更になるという問題も過去に出題されたことがありますので、そういった問題も試験までに一度は解いておくようにしましょう。
また、高低点法にて単位当たりの変動費と固定費に分解したあと、CVP分析させるという問題も予想されます。そういった問題の場合、最初の時点で計算間違いなどのケアレスミスをしてしまうと全滅という結果になりますので、本試験では必ず計算間違いしていないかどうか見直しをしながら次の問題に進むようにしましょう。



最近の傾向として工業簿記は比較的基本を問う問題が出題されるのに対し、商業簿記はこれまで過去問にはない問題が出題されております。
対策としては、普段の問題演習のときから、なぜこういう仕訳になるのか、しっかり意味を考えながらおこなうことです。
そのとき、問題文を読み、今問われているのはどの仕訳なのか、過去にどのような仕訳が行われてたのか、またこのあと(将来)にどのような仕訳が行われるのか、そういったことを常日頃から考えながら問題演習をおこなわないと、最近の商業簿記の問題を解くのは難しい時代になりつつあります。
深く意味を考えずに繰り返し問題演習をするだけではなく、テキスト等でしっかり意味を考えながら問題演習をおこなうことが合格点に達するためには大切ですので、今一度基礎・基本の徹底を図るようにしてみてください。


また、第1問はこれまで長年、仕訳問題が出題されておりましたが、前回の第1問の仕訳問題では過去に出題されたことのないような問題が出題されました。
今回もこれまで過去に出題されたことのない仕訳問題が出題されるのか、またこれまで過去に出題されたような仕訳問題が出題されるのか予想しにくいですが、まずはこれまで出題されていたような仕訳問題をしっかり練習しましょう。
前回のような仕訳問題が出題されたときの対策は、普段の仕訳問題を解くときに、しっかり問題文を読み、なぜそのような仕訳なるのか考えながら仕訳をおこなうしかありません。
簿記の世界で「習うより慣れろ」という言葉があります。これは繰り返し繰り返し解くことで知識の定着を図るという意味ですが、最近の2級の試験問題を見ていると、繰り返し解いて知識の定着を図るだけは合格点に達するのが難しくなりつつあります。
ただ、繰り返し仕訳問題を解くだけではなく、有価証券の売却のさい、なぜ端数利息を受け取るのかなど、しっかり意味も考えながら解くようにしましょう。

最後に最近の試験の内容が変わりつつあること、28年度から徐々に2級の出題内容が変わることから、第1問はこれまで出題されてきた仕訳問題ではなく、第2問で出題される個別論点ということもありえますので、もし、第1問でいつもの仕訳問題でなくてもビックリせずに落ち着いて、しっかり問題文を読んで解いてください。